(1)学習効果と時間

中学受験という枠の中でお話します。
一体どのような学習方法が比較的短期間に子供の持つ能力を高めることができるのでしょうか。
 受験勉強や入試情報に対して子供たち,御父母が持たれるイメージは様々です。

 おそらく,塾で与えられたテキスト・課題をやって、最後に入試の過去問題をやれば完璧という、やれば安心、やればできるようになるというイメージをお持ちじゃないでしょうか?
しかしながら,テキストや参考書を勉強するのは、小説などの本を読むのとは明らかに異なる性質のものです。
 本来、テキストや参考書に書かれていることは、自分のものになって、そして応用が利く形で理解されて始めて、それを読んだと言えるのだと思います。
ですから勉強の進度や効果は「何を何ページ進んだか」とか,「週に何日塾に通っている」と言うような進捗状況や,時間数を以ってではなく、書かれていることがどの程度理解でき覚えられたかを以って計られるべきではないでしょうか?
 「なんでこんなに時間をかけてるのにできないんだろう?」なんて悩みは比較的よく耳にしますが,そのわけがここにあるわけです。
学習の効果は学年が上がるほど、そのレベルが上がるほど勉強方法によっては時間に比例しにくくなります。 その段になると、その原因が、自分自身の能力にあると考え、
自信を無くしてしまう生徒や、
「うちの子は
劣っているのでは」と思い込んでしまうような
御父母も
多いと思いますが、決してそんなことはありません。前述のように、小学生の発達段階にはかなりの個人差があるのです。  お子さまが、赤ん坊のころ何ヶ月で初めて歩けるようになったかとか、何歳で字を書けるようになったとか、当時としては、自慢や気落ちがあったかと思われますが、今となってはそんなことは何の影響もないはずです。それから僅か10年足らずの時間しか経ていないのですから、やはり成長の個人差はまだまだあっても不思議はないと考えられないでしょうか。
ご自身の子を「平均値」で比較することは意味のないことです。


(2)加速力の元になる勉強方・積み重ね

 どうしたら,かけた時間を学習効果・学力に反映させることができるでしょうか。

 ① 積み重ねの核となる分野の徹底。

一般的な進学指導塾・個別指導塾が取り入れている学習方式の多くは、適当なインターバルを明けながら螺旋的に繰り返しを図ろうとする方式です。
 一見、最も効果的に聞こえるこの方式に大きな落とし穴がある ことは意外に知られていないようです。
 例えば、全ての学習分野が10あるとします。そのそれぞれにかける時間をほぼ平等に振り分け、学習効果を1+1+1+……+1=10と計で測るのが通常のカリキュラム方式です。 
 しかし、この10の分野のうち全てに共通して用いられる基本ルールがその中の「2」あれば,これを徹底しないまま進むと、後の「8」の分野はどれほどの時間をかけたとしても理解があいまいのまま、そして繰り返すたびに、同じ間違いを何度も繰り返すことになってしまうのです。

 1+1+1+……+1=10の予定がくるって「5」にもならないわけはここにあります。
 
 全ての分野に共通する基本ルールを徹底して学習
すること,そしてこの段階を決して中途半端に終わらせることがないように最も多くの時間をかける必要があります。
 どのくらいの時間をかける必要があるのかは、一概に言うことはできません。
ただ通常なら1~2回の授業で終わる分野でも、場合によっては1~2ヶ月かけるような徹底さは必要だと考え、実践していきます。   また、ある段階では「不要」と思われる分野は後回しにする大胆さも必要です。
学習効果を測る尺度はこの意味ではまさに「積み重ね」,言い換えれば、算ではかられるべきものではないでしょうか。
② 基本ルールとは
 算数で言えば 速さ(旅人算・鶴亀算・差集め算・仕事算・ニュートン算などの様様な分野を
共通の方法論・解法ツールで問題を捉えていく方法論を指します。
 つまり,「~算」として個別に捉えるような方法論ではありません。

 初めはかなり時間がかかりますが、一旦,この捉え方ができるようになると、
その問題が「何算」なのかといった意識はなくなり,
また暗記的な学習法からも解放されることになり,
積極的に難しい問題にチャレンジしようという姿勢も出てくるようになります

 算数にはこういった基本ルールは7大分野ごとにそれぞれありますがそれ程多くはありません。
 ただ,一般的な指導法でこれらを体得体感できる子供はまずいないでしょう。
 しかしながら、いわゆる「できる子」が指導者の意識にかかわらずこれらの基本ルールを無意識に感じ取っているのではないかと容易に想像できることです。
そのできる子の「意識構造」と同じレベルにしようというわけです。

また、よく言われる誤解の一つは、
「基本ルール」=「易しい問題」
です。
平易な問題が解けても、それで基本ができてるとは全く言えないのです。だから、高いレベルの問題にぶつかる度に、同じようにできない を繰り返してしまうのです。
私の言う「基本ルール」は、「応用に耐えうるレベル」までを含みます。
 具体的な例を異なるステージで二つ説明しましょう。
例 1(基本ルールを身に着けるステージ)
消去算
 ってご存知ですか?
「鉛筆3本と消しゴム2個で250円で・・・・」というイメージでしょうか。
ある意味正しいのですが、私が言うところの
基本ルールとしての消去算
(1)和の式の組み合わせ(これが、上のイメージでしょう)
(2)差の式どうし、もしくは和の式と差の式の組み合わせ(差式とはA×5-B×6=350のよう)
(3)多元(未知数多数)問題の表化 と表の利用のしかた。
(4)比化消去算(Aの3割と、Bの20%の差が320・・・など)
(5)つるかめ算・過不足算への利用
(6)平面・立体図形への利用
などをきちんと整理して自分の体系の中にとりこむことを言います。
だから、「消去算ってどんなのあった?」って聞かれたら、何も見ないで,これを全部答えられなければ(もちろんそれぞれの標準的な問題もきちんとイメージできないといけませんが)基本ができてるとは言えないのです。
例 2(基本ルールの利用のステージ)
算数で,図形の平行移動 という分野があります。独立した分野のように思われていますが,実は違います。
この分野で用いられる基本ルールは大きく捉えて3つあります。
 1,通過算的な速さの考え方。
 2,平面図形の基本的な性質,特に相似(辺の比相似です)
 3,点の移動であつかう 点の速さ→面積変化の速さ の単位変化  です。
 ですから,「図形の平行移動」といっても何も新しい考え方などないわけです。
 それぞれの基本ルールをしっかり見に付けている生徒にとっては,単なる,複合問題ととらえられるはずで,実際私も生徒達にはそのような意識付けをしています

 
 このような分野の問題はむしろ,難しいほうが解く意味があります。
算数ではこのような分野が「数多く」存在します。
 おわかりでしょうか?
「数多く」ある全てのものを独立して扱っていたのではきりがないのです。
 ましてや,全てを暗記で身につけようなどの考えは能力の無駄遣い以外の何物でありません。
(いるんです,こういう指導をされる先生達,けっこう) 
 問題に臨む意識も,「図形の平行移動」の問題を解いているのと,「基本ルールを組み合わせて」目の前の問題を解いているのではまるっきり違います
。 
 
試験当日の問題に対する処理能力という観点で考えればもっとはっきりしますね
 それにしても,塾の配る教材の多さったら(笑),やればできるとでも思ってるんでしょうか。
そうじゃないですよね。結果,できる子だからやれるんであって(かなりできる子は逆に馬鹿にしてますよ。同じもん配るなよ!!とね。)
もともとそこまで到達してないのに,量だけあってもねぇ。

 ③ 身に着けるべきステージ 練習・訓練のステージ
 自分がいまやっていることは何なのか。このことをまずはっきりさせましょう。
与えられたテキストの問題を片っ端から解きまくろう(できればいいですよね、こんなこと)などとは考えなくてもいいんです。
 A;基本ルールを理解し、身に着けようとしてその問題に向かっているのか。それとも、
 B;身についた基本を、その問題で利用しようとしているのか。
むろん、A、Bステージの中間的な練習問題もあるとは思いますが、
なんといってもAステージの重要性は大きい。(先ほど説明したように、易しい問題に取り組むことと誤解しないで下さいね)
わかりやすく言うと、
 Aは、「さあ、わかったかな?」
 Bは、「さあ、やってみよう!!」 
Aステージでの躓きは、できるだけ早く手当しなければいけません。
「さあ、わかったかな?」さらには,「どうわかったのかな」に答えられるようにしなければなりませんね。
Bのステージでは、ポイントは「自分自身の気づき」
です。簡単に教えちゃいけないのです。さらには、問題をまるごと暗記して解くなんてもってのほかです。
ここまで、お話して気が付いたことありませんか?
「いったい、自分の子が塾で何をやってきているのか」
「宿題けっこう出てるのにわかってやってんのかな」

お父さん、お母さんだけじゃないですよ。私も気になります(笑)
(3)学力を加速させるために
 勉強は本来、「一を知れば、二が分かり,二を知れば,四が分かり、四を知れば八が分かり、………」というように
 乗数的効果を期待できる方法と意識を持ってやるべきもの
ですが、初めは特に時間がかかります。
これは、「一を知る」段階-基本ルールの学習段階を徹底的にやる必要があるからだということは既に述べた通りです)
 そして多くの失敗はこの段階の不徹底・妥協にあります
この段階を前述したようなコンセプトで、丁寧にやっていくことで、必ず、後の時間の学習は初期段階よりも高密度の学習となり乗数的加速的な効果が期待できるようになります。

(4)加速化の個人差

 大事な点が二つあります。
① 成長度・・・加速効果を考える上で、中学入試段階では成長の度合いを無視できません。

一人一人の子供の個性・能力・成長度に合わせて、その子が現在、何をどの程度学習することがその子にとって最も加速効果を期待できるかを考えなければなりません。
 具体的には,塾のカリキュラムの再構築が必要になることも考えた方がいいでしょう。テキストの扱いも考えなければならないかも知れません。

 成長度を無視して先に進むだけの勉強はけっして良い結果を生み出しません。
何度繰り返しても,またできないの繰り返しになるだけです。
 先に進むためには,その地点(時点)までの到達度を確実に測られなければならないのです。
だから,こんなこと言っていいのかどうかはわかりませんが,大手の塾のカリキュラムについていける子なんておそらく1%も
いないですよと。(カリキュラム競争ってご存知ですか(笑)?全く生徒の能力は無視なんですからね。)
 それでも,塾に通う子がほとんどです。私の生徒もそれが大半です。子も親もカリキュラムに追われてます。
でも,私はクールです。全体が見えてますから。「今は~までしっかりできるようになりましょう」と提案します。
もちろん到達度まで含めてです。
丁寧に,しっかりと時間を使いましょう。
 逆提案もありますが,困るケースはこういうものです。
「易しい問題だけでもできるように」というものです。おそらく易しい=基礎とお考えなのでしょうが,そうじゃないことはご説明の通りです。
 今だけじゃなく,将来的にどういう状態が「できる!!」って状態なのかを自己判断できるようにと考え,指導に当たっているわけで今やっていることはもちろん「基礎」には違いないですが大雑把に捉えれば,そのための適年齢な「素材」なのです。
学年が進んでいっても大事なのは自分の「できてる・できてない」の客観的な判断ができることが大事なのです。
そこから「何をどうしなければならない」が見えてくるのですからね。
話がちょっとそれがちになりましたが,とにかく今は自身ではできないですから,助けつつ意識を促すというのが私の存在意義です。


② 素直さ
・・・これは重要な要素でありますが,難しいです。
 塾で言われたことを言われたとおりやること。とても大変なことだと思います。
ここでは「素直さゆえに苦しみ」を味わうことになります。(素直じゃない子は成績面で苦しむだけです。)
 私との出会いはそれだけである意味何らかのトラブルを抱えての結果ではないですか?
そのトラブルをなんとかしようとするとき「素直さが大きな要素・武器」になります。逆にせっかく私と出会っても今までどおりいつまでも塾の言うとおりにしていると,(もちろん不勉強もですが(笑))ほんとにいつまでも成績が伸びません。
 正直言って,家庭教師派遣会社を通して紹介を受けた生徒はこの傾向が強いです。無理も無いかもしれません。初めの出会いが営業担当者ですから,「こうすれば伸びますよ」が聞こえてないのですから。提案があったとしても誰もが言えるような当たり前のことばかりでしょう。それでもなんとか頑張って何度もこちら側に引きつけようと試みます。それも仕事です。
でも,これだけは約束です。
「塾と同じ方法で教えて」とは言わないで下さいね。
また、できなくなるかもですよ。そもそもそこがトラブルの原因であることが多いですから。
今までのお話でおわかりでしょう。「できる!!・できた!!」その正しい判断力こそが財産になるのです。。


学力の加速化